GELANOTS

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Oct 28, 2025

透過するレイヤー、浮かび上がる個性

JOURNAL

— 素材と中材が織りなす、新次元のプロダクト体験

■ 生地開発の核心:経験の積層から生まれる

「アウトドア素材の開発で大切にしていることは3つあります」と語るのは、GELANOTS®の生地開発担当・堀川氏。 それは、目付(重量)・生産性・経験からの応用。 「生地開発は積み重ねの連続。1回目で成功することは滅多にありません。失敗を糧に、次を組み上げていく」と話す。 その試行錯誤の果てに辿り着いたのが、軽さと機能性を両立した新素材だ。

 
■ リサイクル素材に込めた技術:軽さと表情の共存

今回開発されたB103とB203の生地は、使用済み漁網を原料とした超軽量リサイクル素材。 10デニールという極細糸に、70デニールの魚網リサイクル糸を掛け合わせる。 異なる繊度と形状(仮撚り糸と生糸)の組み合わせが、繊細な凹凸と光沢を生み出す。 「繊度差が大きいほど製織は難しくなります。でも、それを形にできるのが日本の技術。まさに“匠の織”なんです」と堀川氏は言う。 さらにB126の生地は、20デニール糸を縦横に使用。加工温度や染色スピードのわずかな差が、風合いの幅を広げる。 「サステナブルは“目的”ではなく“前提”。そのうえで、軽さ・美しさ・柔らかさといった五感で感じる価値を追求しています。」

 
■ デザインの挑戦:透け感で浮かび上がる構造美

製品デザインを担当したmist designの大島氏は、現代のアウターウェアに求められる変化をこう語る。 「都市と自然を行き来するユーザーに、従来の“厚手”や“薄手”という分類では応えきれません。街でも自然でも心地よく過ごせる“シームレスな一着”が必要でした。」 その答えとして掲げたのが、プラットフォーム×カスタマイズという発想。 ダウンジャケットとシェルアウターの4モデルを通して、気候や用途に応じて組み替えられる構造を追求した。 中でも印象的なのは、生地の透け感によって中のAirflake®パックが浮かび上がる構造。 「極薄ナイロンの重なりや中材の変化を、装飾ではなく“機能の美しさ”として見せたかった」と大島氏は語る。

 
■ 素材とデザインの交差点:2次元から3次元へ

今回の開発では、「透け感は弱点だと思っていたけれど、それをデザインとして昇華する発想に感銘を受けました」と堀川氏。 一方、大島氏は「素材の性能から逆算する姿勢に刺激を受けた」と振り返る。 素材とデザイン、それぞれの専門領域を超えて、共通のゴールを“最終製品”に据えた。 それが今回の開発を成功に導いた最大の要因だ。 「生地は2次元、デザインは3次元。両者をつなぐのは“同じ目的地を描くこと”。」 その言葉が、GELANOTS®の開発哲学を象徴している。

 
■ 未来への展望:気候と個性に寄り添うウェアへ

「今後は、気候や環境変化に応じて構造を変えられるモジュール型ウェアに挑戦したい」と大島氏。 堀川氏も「環境負荷をさらに減らし、気候適応型の素材開発を進めたい」と語る。 最後に二人はこう締めくくった。 「我々は常に最終製品から逆算し、生地に求められる性能を追求していきます。」 「だからこそブランドのベストパートナーになれると信じています。」

 
インタビュー: 堀川氏(Gelanots® マテリアル開発担当)/大島氏(Mist Design LLC 代表)